屋敷での職務がようやく完了し、綾乃は制服であるメイド服から私服へと着替え始める 清楚で上品、そのうえ生真面目で内気な外見とは裏腹に、こんな時でもやはり下品な咀嚼音を響かせながらガムを噛んでは膨らませている メイド服を脱いで露わになった綾乃の素肌には、道徳と規律によって己をキツく呪縛しつづけている大人しそうな女性にはあまりにも似つかわしくない紋様が刻まれている デコルテ下の左上乳には大柄な真紅の薔薇と、それに絡みつく長大な蛇は有翼 しかしその頭部は卑猥な男根を模した異形の生物のタトゥー 雪白の右大腿内と左臀部には濃桃色で「FREE TO TOUCH♡」という扇情的な文言のタトゥーが太々と刻まれている 臍下には子宮と卵巣の位置を明示するかの様な卑猥な図柄の淫紋までもが見える 綾乃は右大腿に刻まれた破廉恥な文言にチラと目をやり、ガムを下品に咀嚼しながら切なそうに瞼を閉じて重いため息をついた
9月中旬とは言え今日の職務もそれなりに繁忙で、珠の様な汗露が体中を這い回って肌は不快にベタつく 殊に綾乃は多汗症で、些細な動作や気温の上昇、それに生来の羞恥心を火種とした精神的高揚などによって常人とは比較にならぬほど多量の発汗を伴い、その際は全身に湯を浴びた様に蒸れ湿り、乳清のごとき甘ったるい香気とフェロモンを孕んだ体臭が意図せず周囲に放散されてしまう この体質も、綾乃が幼少の頃から抱いているコンプレックスのひとつだった そのうえ綾乃の生家で信奉されてきた宗派も、教義によって剃毛や脱毛を禁じているため、腋下には黒々と艶めく10cmにも及ぶ和毛が雪白の滑らかな肌をキャンバスにして密生しており、其処に先述の珠露の汗が宝石粒の如く絡みついている 無論、恥丘から大陰唇、そして肛門周囲にも卑猥に縮れた漆黒の和毛が濃密に繁茂しており、腋下とはいくぶん異なる粘りと滑りを伴った透明な体液が纏わりついて糸を引いている
豊満な肢体に刻印された淫猥なタトゥー群を、綾乃は恨めし気な眼差しで一瞥する それらは決して綾乃自身の意思によって彫まれたものではなかった 苛烈な虐めを受けていた学生時代、加虐者達から強制され、あたかも彼女自身の意思であるかの如くショップに赴かされ、もっとも卑猥な図案を彼女の意思であるかの如く選ばされ、なおかつ嬉々として自身の肉体に不可逆の加工を施しているかの様に振舞わされた 従わなければ、もっと陰湿で卑猥な加虐を受けていたかも知れなかった 加えてこのタトゥー群を滑らかな雪肌に彫んでしまった代償として、事実を知らぬ周囲の者達から綾乃は不本意なレッテル…「チ◯ポ狂い」「ハメ娘ちゃん」「誰にでも股を開くオナホ女」etc…を貼られて過ごさねばならなかった 侮蔑だけならまだしも、それらのレッテルを真に受けた♂どもから、口にするのも忌まわしいセクハラ行為を受け続けた しかもそれらの行為を、綾乃自らが嬉々として受け入れているかの様に振る舞い、甘ったるい嬌声をあげる事を加虐者達から強制されていたのだ
綾乃は重い気分のまま忌まわしいタトゥーから目を逸らし、私服へと着替えを急ぐ メイド服なら胸元や大腿、臀部が人目に晒される事はないが、いま彼女が身に纏いつつある私服は、隠蔽性の高いメイド服とは真逆の、破廉恥極まりない露出過多の代物…JC時代から現在までも綾乃を嬲り続けているグループのリーダー格・咲希(さき)が送りつけてきたものだ 乳首がギリギリ隠れるほどに切れ込んだチューブトップの豹柄ビスチェの裾はウエストの括れ辺りで結ばれ、腹部から臍下に彫まれた淫紋を惜し気もなく晒している上、上乳に彫られた「真紅の薔薇と男根蛇」も露骨に際立たせている 鼠蹊部ギリギリまで切れ込んだクラッシュデニムのホットパンツはローライズのうえ、臀部を半ば程度にしか覆い隠せていないため、右大腿内側と左臀部に濃桃色で刻印された「FREE TO TOUCH♡」も全く隠蔽できない 8cmの厚底編み上げサンダルは尻軽で男好きな遊び女を効果的に演出してくれるマストアイテムだ 綾乃はそれらをひとつひとつ身に纏っていく毎に、自らの手で自らに卑猥なレッテルを貼り「ち◯ぽ狂いのハメ娘」の皮を自らの意思で被っているという事実を噛みしめ、再び重いため息をついた
秋冬であれば、防寒を口実にジャケットやコートを羽織ることで全身から放散されるふしだらで淫奔な信号を隠蔽出来るだろうが、生憎いまは9月中ばの残暑厳しい時候だ 綾乃は諦めざるを得ない 彼女は諦念の表情でメイクを整え始める 職務中に施していた薄めのナチュラルメイクを落とし、がっつりとファンデーションを塗り込める…元々、綾乃の肌は白磁の雪肌であるのに、更にドーリーなまでに滑らかな純白を強調する アイラインも極太で黒々と目尻を大きく逸脱するほどまで引き、シャドウは夏らしく銀のラメを派手に散らしパープルと青を基調に濃厚に塗り込めた リップには濃いめのパッションピンクを使い、その上にねっちょりと音がしそうなほどたっぷりグロスを塗りたくると、発情してぽってりと膨らんだ大陰唇の如く卑猥に♂どものリビドーを掻き立てるに充分だ チークにも年甲斐のないケバケバしいピンクを乗せる 仕上げに金髪ロングのウィッグを被ると、更衣室のスタンドミラーに映る自身の余りに卑猥極まりない姿に膝の力が抜けてその場にしゃがみ込んでしまう 綾乃は情けなさで涙と嗚咽を漏らす 「ぁあ、こ、こんなの絶対…絶対にダメなのに…」
着替えとメイクが整い帰り支度もおおよそ済んだ頃、綾乃のスマートフォンが鳴動する 綾乃をJC時代から苛み続けている加虐者グループのひとつ…そのリーダー格・咲希からのメッセージだ そこには今夜の指示が告げられている 「指定した衣装とメイクを纏ったら駅前の歓楽街へ 着いたら連絡して 次の指示をしてあげる そうそう、あんたのコトだから忘れてるかも知れないわね 匂いのキッツいオリエンタルな香りのパフューム、全身にたっぷり振りかけておくのよ」 この装いのままで夜の歓楽街へ出向けと言うのは余りに残酷だ そのうえ夜とは言え残暑厳しい季節の野外は、ただでさえ多汗症の綾乃にとって最悪の鬼門 辿り着く頃には身体中の毛穴から♂どもを誘引する濃厚なフェロモンを伴った汗露が噴き出し、湯をかぶった様に甘ったるい香気が蒸れ溢れているに違いない その破廉恥な身体に、更に匂いのキツい香水をたっぷり振りかけたりしたら、一体どんな事態に巻き込まれ得るのか 綾乃は怖気立って全身を小刻みに震わせる しかし、もしかしたらあるいは、その震えは戦慄だけではない何かにも起因しているのかも知れない 綾乃は噛んでいたガムをぞんざいに床に吐き棄ててヒールで踏み躙り、新しいガムを口中に放り込んで再び下品な咀嚼音をたてて噛み始めた
遊び女らしい濃厚なオリエンタル系パフュームをたっぷりと全身に振りかけ、綾乃は俯きながら邸宅をあとにする 門を出る際に先輩の雪乃とすれ違ったが、雪乃は綾乃の装いの卑猥さに呆気に取られ、かける言葉もなかった 綾乃は無言のまま雪乃に小さく会釈すると足早に駅方面へと歩く 視線は水平より下方向に60° 誰とも顔を合わせたくなかったし、自身の破廉恥極まりない姿に気付かれたくなかった しかし、そのためにことさら足早に歩いたのが悪かった 慣れぬ厚底8cmのサンダルも禍いした 駅への道程半ばにも至らぬうちに、綾乃の全身の毛穴から淫靡な汗露が噴き出し始めたのだ 一度発汗し始めた綾乃の肉体は拭おうが制汗スプレーを吹きつけようが綾乃の意思を無視して一切言うことを聞かない ようやく駅に着く頃には、彼女の周囲にだけ薄い桃色の靄でもかかっているかの様に蒸せ返っており、たとえ彼女の姿を視認せずとも半径7mの射程内にいる♂どもは、鼻腔に侵襲してくるパフュームと体臭と濃厚なフェロモンによって意図せず股間を勃起させてしまうありさまだった
帰宅ラッシュ時を迎えた駅前のコンコースは様々な人々が行き交う 明日からの三連休を前にして誰もが気もそぞろで、どこか浮ついた表情を湛えている 今夜は派手に呑み騒ぎ、短いこの連休を共に享楽的に過ごすための刹那的なパートナーを物色する男達や女達が、待ち合わせスポットに屯している 綾乃は相変わらず全身の毛穴から珠の汗露を噴き出しながら、水平より60°下方に俯きつつ指定された待ち合わせスポットに重い歩みを進めている 男からのナンパ待ち目当ての様な今の己の風体を、可能な限り人目に晒さぬ様に光源から遠くなる経路を敢えて選び、何かに怯えているかの如く背を丸めて前後左右に目を配りながら鈍重に進む と、その時、再び綾乃のスマートフォンが鳴動する 液晶には加虐グループのリーダー・咲希からの短いメッセージが表示されている 「遅れるからちょっとそこで待ってて」 綾乃は肉食大型獣の檻の中にただ独り置き去られた無力な小動物の様な暗澹たる気分に包まれ、途方に暮れて暮れなずむ夕闇の空を見上げる
5分、10分、15分と、時だけが虚しく過ぎてゆくが、待ち合わせ場所を指定した咲希は一向に姿を見せない 夕陽は遂に西の涯に没し、辺りは本格的な歓楽街の喧騒に包まれ始める ナンパ待ちの女達や軽薄で頭の軽そうなチャラ男達、キャバクラの客引きや人形の如く妙に白い肌のホストやその腕に絡みつくホス狂いの娘達 路上に屯して酒や薬をオーバードーズして奇声をあげる、正気の保てていない若い男女達 それらのどの集団にも帰属していないはずの綾乃が、しかし彼等の誰よりもこの下品で猥雑な歓楽街の雰囲気にピッタリの装いを纏い、しかもその全身の毛穴から珠の汗露とふしだらなフェロモンを周囲に発散させつつ、あまりの居心地悪さに打ち震えている 20分が過ぎようという頃、ベンチに座って俯く綾乃の前に見慣れぬ男が立った
驚いてハッと顔を上げる綾乃 彼女の前に立っていたのは職場から帰宅途中の、疲れて生気の欠片も残っていなそうな五十路半ばのサラリーマンだった 頭髪は半ば薄くなり白髪も多い 皮脂にテカった相貌には深い皺が幾つも刻まれ、眼下の隈は薄黒く不健康を絵に描いた様で、おまけに身体全体から加齢臭と皮脂と汗汁が混濁した不潔極まりない臭気を放っていた ベンチに座り途方に暮れて俯いていた綾乃の顔を覗き込む様に、その男が屈み込んで顔を寄せてきた 「ナンパされちゃうっ! 絶対絶対絶対、私ナンパされちゃうっ!!」 身を固くして胸中で叫ぶ綾乃 その叫びは恐怖から生じたものだったのか、あるいはもっと別の何かから生じたものだったのか…
男は既に充分に酔っていた 男の呼気には濃厚なアルコール臭が含まれ、加えて生臭いニンニクやオリエンタルな薬味の臭いが混淆している上に口臭自体も歯槽膿漏の強烈なエグ味を伴っており、そのあまりに強烈な臭気のせいで正対して応じ難い その不潔な初老の男が綾乃に向けて言葉を発した 「え、えへへへ… お、おねえちゃん、この辺で安くて美味い良い呑み屋、知んない?」 全く呂律が回っていない口調で、三軒目に行くべき呑み屋を紹介しろと宣った 綾乃の風体を見て、歓楽街で遊び慣れた娘だとでも思ったのだろう 体臭と口臭には辟易させられるが、それでも身体目的で近寄って来たナンパ男ではない事が綾乃を少しだけ安堵させた とは言え、この臭気にこれ以上鼻腔を侵襲させるわけにはいかない 「あ…え、ええと、そうですねぇ…」と戸惑う綾乃 適当な店をスマホで検索し、とっとと追い遣ってしまおうとしたその瞬間、またしても綾乃のスマホが鳴動した 「そのおっさんを呑み屋まで連れて行って、一緒に呑んでて」 あの女…咲希からのメッセージだ 綾乃はスマホを握りしめ、これから己に提示されるであろう残酷な「指示」を想う 戦慄で全身が小刻みに震え始めた
咲希からの指示に思わず頬を引き攣らせる綾乃 噛んでいたガムを路上に吐き棄て、不愉快な気分を紛らわせようと、彼女は新しいガムを下品な咀嚼音をたてて噛み始める ナンパ目的で近づいてきたわけでもない不潔な男を、わざわざ呑み屋まで案内してやるだけでなく、綾乃の方から積極的に接近して酒を酌み交わせという指示は何を企図しているのか 全身から異臭を放っている様な不潔極まりない初老の酔漢とは、一刻も早く相応の距離をとって退散させたいというのに、綾乃の方から親切を装って饗応してやり、ましてや楽しげな顔で酒の相手をして過ごさねばならない 耐え難い不快と屈辱を感じながら、しかし綾乃はその心情を表情には出さずに飲み込んでしまう 諦念…こんな屈辱と悲嘆をJSの頃から20年近く味わされてきたが故の、哀しい処世術…綾乃はそれを、25の齢で身につけてしまっていた 男の顔に向き直り、クチャクチャと下品にガムを噛みながら綾乃はにっこりと微笑む 「検索してみますから少し待ってくださいね」…敢えて心情とは真逆の弾む様な声音で男に応じる綾乃 「お…おぅ、頼むよ、おねえちゃん」と応えた初老の酔漢は、ようやく綾乃の破廉恥極まりない風体に気付き、スマホの画面を見入っている彼女のつま先から髪の先までをねっとりとした好色な視線で灼いていく やがて綾乃は幾つかの候補の中から一軒の呑み屋を選び出し、男に提示した 「ココなんか良いんじゃないでしょうか いかがです?」 問われた男は否も応もなく首を何度も縦に振って応諾した 「それなら私、御案内致しましょう」と綾乃が言った時、既に綾乃の全身から発散される発情フェロモンに囚われた男は、図らずも股間を勃起させてしまっていた
安くて美味い呑み屋を尋ねただけなのに、わざわざ店まで自ら案内までしてくれると言う淫奔な風体の女…「新手の客引きか」とも怪しんだが、盛大に酔いが回っている男にはそれ以上の理性的な思考は巡らない むしろこの好機を存分に楽しもうとさえ思うこの男は、たとえ酔っていなくともやはり浅薄な頭脳の生物なのだろう そして浅薄であるが故に、自らの本能に純粋でもあった 呑み屋までの短い道程の中でわざとらしくふらついて綾乃の腕にしがみつき、そのまま腰にしがみつき、むき出しの大腿に頬ずりしながらよろよろと立ち上がりざま、偶然を装って綾乃のホットパンツから半分以上露出した雪白の尻房を揉む 不潔なうえに強烈な臭気を放つ男の無作法を、しかし綾乃はきつく跳ね除けられない 咲希からのメッセージから類推すれば、この様子さえ何処からか監視されているのかも知れないからだ それ故、綾乃は男の酔いを装った無遠慮なじゃれつきを、あたかも是認してさも悦んでいるかの様な媚態を示さざるを得ない 「ぁぁん、いけませんゎ、おじさま♡」「…んふ♡ もうっ、おじさまのえっち♡♡」「ぃやん…ヒトが見てますゎおじさま♡ ここじゃダメょ♡♡」などと、卑猥で密やかな嬌声を男の耳許に囁く 店の前に着く頃には、酔いに任せた男の無遠慮は最高潮に達し、右腕で綾乃の腰をきつく抱き寄せ、不潔に黒く汚れた指を綾乃のホットパンツの前ポケットの奥にまで侵入させていただけでなく、モゾモゾと卑猥に蠢かせている様なありさまだった 無論、綾乃も不本意ながら陥落寸前まで追い上げられている
綾乃の履いているホットパンツのポケットはあくまでもイミテーションで、袋状になってはいない 咲希たちによって改造(むしろ改悪)されたそのホットパンツは、そのままダイレクトに綾乃の鼠蹊部から秘部に到達出来る…謂わば「穴」でしかない その「穴」から、男の不潔な指の侵入を許してしまった綾乃は、いいように男に嬲られ痴戯られ焦らされて、心にもない媚笑を浮かべながらはしたない嬌声を通りに響かせ、通行人や歓楽街の住人たちからの視姦に晒され続けている 「は、早くお店に入らなくちゃ…」と気ばかりが焦る綾乃 しかし執拗な男の指は、とうとう彼女の秘裂の際をなぞり始め、時には陰核を摘んで揉んだり扱いたりと、もはややりたい放題だ 本来であれば男の手を毅然とした態度で跳ね除け、警察を呼ぶべき場面…しかしここでもまた、綾乃は処世術としての「諦念」に身を委ねる 即ち、無作法な男の指に抗う事を諦め、入店前に男の性欲をとりあえず満足させてやる選択をした 諦めてしまえば後は簡単だった 店の傍の物陰まで男の手を引いて誘導した綾乃は男に向き直り「もう♡ おじさまったらせっかちなんだから♡♡」と思い切り媚態を示しながら甘ったるく鼻を鳴らしてみせてやる 男はもはや辛抱堪らんといった様子で綾乃をきつく抱きしめ、貪るように唇を重ねて舌を絡め合う 男の不快な口臭やアルコール臭、ニンニク臭などが唾液と共に綾乃の口腔を侵蝕してくるが、男が一向に唇を放してくれないせいで、已む無く綾乃はその不潔な唾液を嚥下せざるを得ない その、あまりの汚辱感に綾乃の全身は総毛立ち痙攣の如く身震いしてしまう 綾乃の唇と舌と口腔を不潔に侵蝕しながら、彼女の秘裂の際を何度もなぞっていた男の右手の指は、遂に熱く泥濘んだ内奥へと侵入を果たす 卑猥に蠢き、掻き混ぜ、恥襞の肉壁を執拗にノックし、ちゅぷちゅぷという艶かしい水音をたてている 左手は綾乃の腰を抱き寄せつつも、彼女の豊満な乳房や尻房を思うが儘に揉みしだいている やがて時が満ち、綾乃は男と汚辱感に塗れたディープキスをしながら甘ったるく鼻を鳴らし、腰をカクカクと滑稽に痙攣させて絶潮の頂を昇り詰めた
絶潮に至った時、綾乃は汚辱に塗れた快感に霞む瞳で、ビルとビルとがひしめき合う物陰から見える「狭い夜空」を見上げていた 遥か遠くに細長く見える深紫色の夜空はビロードのリボンの様で、そこに美しく燦く星々は極上の宝石の粒の様だった その、美しいビロードのリボンと宝石粒たちと比して、汚辱感に塗れながら澱んだ快感に喜悦した自分が、ひどく見窄らしい存在に思えた そう思うと不意に涙が溢れた 「またひとつ、汚れてしまった…」 破廉恥極まりない遊び女の風体に身を窶した心優しい淑女が、声も無くさめざめと泣いていた 綾乃の涙を理解できずに戸惑う愚劣な男は、綾乃が余りの快感に嬉し泣きしているとでも思うしかなかった 一頻り涙を流した後、思い直した様に綾乃は男に媚笑してみせた 「ぁあん、ごめんなさい、おじさま♡ あんまり強烈だったから涙が出ちゃった⭐︎ さ、お店に入ろ♪」 綾乃は男の手を引いて店の扉を開けた
男が望んだのは「安くて美味い呑み屋」であった 夕陽が落ち切らぬうちから既に二軒もハシゴして呑んでいる様な懐の寒々しいブルーカラーの男ならば、それが最も妥当な選択だろう しかし綾乃に腕を引かれて入ったこの店は、どうやら男の思惑とはだいぶ異なるものの様に見える 第一、店内の照明があまりに薄暗い 強烈な白熱球の明かりの下、熱燗や焼酎やビールを呑みながら焼き鳥や煮物でもつまめればと思っていたが、そういう種類の「一杯呑み屋」とは明らかに違う 各席はボックスになってはいるが間仕切りなどは無く、薄いレースのカーテンが申し訳程度に周囲からの視線を遮っている 店内は満席というわけでもなさそうだが、其処此処のボックスからは時折、感極まった様に切なげで甘い嬌声が聞こえてくる 「どうやら此処は…」と男は胸中で呟く 「カップル喫茶…あるいはハプニングバーか」 男の胸は興奮に高鳴るが、しかし酒を一杯注文する毎に常に合計金額を計算しながら呑む習慣のある様な貧しい男にとって、まだ給与日まで20日以上もあるこの時期に此処での多大な出費は死活問題だ 「お、おい おねえちゃん こんな店、入ったは良いがカネ払えねぇよ、オレ…」 弱気になった男を奮い立たせる様に綾乃が卑猥にウィンクして応える 「だいじょうぶょ、おじさま♪ 此処での支払いはアタシが全部持ってア・ゲ・ル♡」
